いじめに発展するような危険性が隠れている日々のトラブルや出来事を、担任教師が一つ一つ丁寧に対応し、しっかりと解決していくことで、いじめは防ぐことができます。
その意味で、まさに「いじめが起きてからでは遅い」のです。
厳しい言い方ですが、いじめが起きるのは、教師がそれまでの小さな危険性を見逃し、しっかりと解決してこなかったから、と私は思っています。
それでも、いじめが起きた時にはどうすればよいのか…。
今回は、いじめが起きた時の担任教師のあり方や対処方法などについて書きます。
例えば、ある子供(A児)が、複数の子供たち(B児やC児ら)から嫌がらせ(故意にぶつかる、物を隠す、机や椅子を蹴るなど)をされたり、不当な扱い(仲間はずれやバイ菌扱いなど)を受けたりするなど、「いじめ」があったとしましょう。
この場合、クラスの中に明らかな上下関係や主従関係ができ上がっています。
嫌がらせや人を傷つける行為が一方的な形で行われているものとして、対応していくケースと考えます。
担任教師がまずやることは、A児から話を聞くことです。
A児の今の思いやこれまでの辛かった気持ちや経過などについて、時間を取って丁寧に聴きます。その上で、A児がどうしたいのかを含め、今後のことについてどう進めていくかを相談します。
A児の気持ちに寄り添いながら、今後の対応を考えることになりますが、最終的に必ず伝えたいのが、担任教師として「必ずA児を助ける」という約束です。
そうできる保障はどこにもありませんが、そのぐらいの覚悟を、教師がA児にも自分自身にも伝え、約束するということです。いじめに立ち向かう時には、どうしてもこの覚悟が必要です。
それから、いろいろな子供たちなどから、様々な情報収集を行います。
これまでのことを含め、事実をしっかり把握するということです。ここが曖昧だと全てが上手くいきません。
ですから、当事者や関係する子供たち、周りにいた子供たち、他の教員などからできるだけ確かな情報を集めることになります。
いじめは、そもそも隠れた所で行われることが多いため、すぐにはっきりとした事実が分かるケースは少ないでしょう。
だからこそ多くの情報を収集し、ほぼ確実な事実といえる証拠を掴んでおくことが重要です。
特に、当事者の子供たちから直接聞き取りをする中で、互いに言っていることが異なることは往々にしてあります。
しかし、曖昧なままの状態ではいけません。必ず事実なのかどうかを確認し、当事者間でも互いにはっきりさせることが重要です。
次に、加害者であるB児やC児らと話をします。
堂々と嘘をついたり、いい加減なことを言ったりすることもあるでしょう。
しかし、教師はB児やC児らに淡々と接し、これまでの一つ一つのいじめの行為や悪い言動を事実として、しっかり認めさせていくことです。
この場で問題が解決するようであればよいのですが、たいていいじめと言われる状況は、それほど簡単には改善しないケースが多いです。
B児やC児らの態度や様子にあまり反省が見られない場合は、クラスの全員の前で、もう一度こうした場を設けます。もちろんB児やC児らにも伝え、確認をした上での話です。こんなふうにです。
「これはクラス全体の問題だから、みんなにも話さなくてはなりません。君たちの考えをクラスのみんなにも聞いてもらおうと思います。いいですね。(嫌とは言えない空気の中で)…」
このように、教師は「いじめ」との戦いに足を踏み入れていくことになります。そして、クラスの子供たち全員を巻き込んでいきます。当たり前ですが、ここからはさらに相当の覚悟が必要になります。
この続きは、次回とします。