51 「働き方改革」とは…

 本号からは、学校に30年勤めた元教師としての私の思いや考えを発信していきます。

 今回は、「働き方改革」がテーマです。

   「働き方改革」…この言葉を知らない大人は、いないでしょう。

 ただ、この「働き方改革」、いったいどこまで進んでいるのでしょうか。

 また、国がこの改革の声が上げてから、かれこれ何年になるでしょうか。6、7年ぐらいでしょうか…。

 あなたに聞きます。これまでのいろいろな施策の結果、あなたの働き方は、変わりましたか?そして、働きやすくなりましたか?

 次のような話を聞いたことがあると思います。

 「学校の先生は、様々な業務に追われ、すごく大変で心身共に疲弊しています。だから、仕事を減らすことが必要です。これからは一人一人のワーク・ライフ・バランスが重要で、先生たちも自分自身の時間や家族との触れ合いを重視し、余裕のある人生を歩んでいくことが大切です」

 この意見や考え方に、私も賛成です。ただ、もう少し考える必要があると思っています。

 それは、「働き方改革は、仕事量を減らすこと」だと思っていませんか、ということです。

 確かに今の教員は、やることがあまりにも多過ぎます。まずは、減らせる仕事を大いに減らしていくことが必要でしょう。

 私は、教員の仕事量を減らすことの大切さや必要性には、もちろん同意します。しかし、それだけでは片手落ちだと思っています。

 政府は、働き方改革実現会議の中で決定された9つのテーマによる「働き方改革実行計画」(2017年3月)を発表しています。

 ちなみに、多くの人が働き方改革だと思っている「長時間労働の是正」は、その9つの内の1つです。

 働き方改革実行計画のテーマをいくつか挙げると、①非正規雇用の処遇改善 ②賃金引き上げと労働生産性向上 ③長時間労働の是正 ⑨高齢者の就業促進 などです。

 特に、「③長時間労働の是正」については、時間外労働を月45時間かつ年360時間に抑えることを原則としています。(※2015年に起こった、電通社員の過労自殺事件がきっかけになったと言われています)

 過労死ラインと言われている「時間外労働、月80時間」は、換算すると1日約3時間40分になります。例えば、一般的な小学校で考えてみると、単純に土日を休日として、「朝7時30分に出勤して、夜7時40分まで仕事をしている」場合(午前8時出勤、午後4時30分退勤として)が、これに当たります。

 「時間外労働を月45時間にする」ということは、1日約2時間短縮するとして、同様に考えると「朝7時30分に出勤して、夜6時までに退勤する」ということになります。

 要するに、これまでの仕事の生産性を上げて効率化を図る、または、その分の仕事を減らして(なくして)時間外労働を2時間以内に抑える、ということです。

 どうでしょう、「土日に全く仕事をせず、毎日6時までに退勤する」ことはよいこととして、仮に今の仕事の効率化・縮小化により、時間外労働を2時間以内に抑えられたとすれば、それで教員の「働き方改革」は成功した、と言えるのでしょうか。

 私が「片手落ち」と言うのは、この点です。

 労働時間を減らすことは必要ですが、ただそれだけでは教育的効果が上がらないばかりか、むしろ教育の質が落ちて教員としての評価や価値が下がる可能性さえあるからです。

 「働き方改革」の本来の目的は、労働時間を減らすことだけではなく、私たちが仕事にやりがいや意義を感じ、生き生きと働きながら社会に貢献することにあると思います。

 その意味で、私たちは教育的効果の低い仕事(時間)を減らしながらも、その一方で、より教育的効果の高い仕事(時間)を増やしていくことが必要なのではないでしょうか。

 増やすと言うと、「時代に逆行している」と非難されそうですが、今こそ必要とされる『子供と関わる仕事(時間)』『教材研究や授業準備の仕事(時間)』『教師としての力量を高める研修や学びとなる仕事(時間)』を増やすことが大切だと思います。

 次回は、この続きです。

★最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ応援クリックをお願いします!
★最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ応援クリックをお願いします!
学校教育
遊ぼう先生をフォローする
タイトルとURLをコピーしました