今回は、「こだわりと徹底力」です。前回の「完璧を求め過ぎない」と一見矛盾するように感じるかもしれませんが、そうではありません。
これまでにも何度か伝えてきた、この「こだわりと徹底力」は、子供たちと信頼関係を結びながら生活していくために、ぜひとも必要なことだと思っています。改めてテーマにしてみます。
こだわりと徹底力
教師にとって必要な資質・能力として、私は「こだわりと徹底力」を挙げます。
これも、「タテの関係づくり」に大きく関わります。
「こだわり」とは、「これは子供たちにどうしても守らせたい」と、教師が特にこだわる「大切にしたいこと」を指します。
4月当初、子供たちに時間をかけ、心を込めて説明したことでしょう。
大まかに言えば、「こういう人になるよう努力していきましょう」「こんなクラスを目指していこう」に当たることかもしれません。
教師によってその中身は異なるでしょうが、強い思いと価値観でもって子供たちに伝えた内容になることは間違いないでしょう。
あなたは、どんなことを子供たちに伝えましたか?
例えば、こんな話をしたとします。
「時間は、人に与えられた平等な権利です。その時間を互いに大切にし、しっかりと守るようにしていきましょう。人の時間を勝手に取ることは、許されません」
と、時間の大切さについて思いを込めて伝えたとします。
そのあと、授業時間に遅れて来たり係活動が長引いたりするするなど、時間をムダにしたり守らないような行動をしたりする様子が子供たちに見られた時、教師がどんな対応をするかです。
当然指導をすると思いますが、中には軽い注意だけで終わったり、忙しさに紛れて後回しにしたりする姿が見られることがあります。
ここは紛れもなく、すぐに厳しく指導する場面です。もちろん大きな声で怒鳴るという意味ではありません。
子供たちが「これからは絶対に繰り返さないようにしよう」「時間は大切だな」と真剣に思えるように、理路整然と丁寧に指導するのです。(全体と個別での指導の場合があるでしょう)
教師が大切にしようと伝えたことに関して、指導が甘かったり適当になったりしてはいけません。
結局、言った教師自身が本当は大切に思っていないのと同じになってしまうからです。
これを「指導の軸がブレる」とも言います。
教師が「このことは特に大切にするんだ」と伝えたことに対し、こだわることです。
教師がそのことをどれだけ大切に思っているか、どれほど価値を置いているかによって、指導の仕方も異なってくるでしょう。
「これだけは」と決めたことに対しては、こだわりをもって、毅然とした態度で指導したいものです。
こだわりの数が多すぎるのも、また「完璧を求め過ぎる」ことになってしまうので、あくまで「これだけは」というものに絞り、ブレない指導を続けていきましょう。
子供たちは、この教師の「こだわり」を感じながら、物事の重要性を学んでいきます。
「このことはものすごく大切なことなんだ」と思って意識して守るようになったり、反対に「これは、それほど重要ではないな」と、あまり意識しなくなったりします。
こういうことを学校生活の中で肌で感じ学びながら、子供たちは自然と自分たちの生活をつくっていこうとするものです。
また、その際にもう一つポイントとなるのが、既に述べている「徹底力」です。
指導の仕方が、時間とともに曖昧になったり、子供や場面によって異なったりして、いつも同じような指導が行われなくなっていくことがあります。
子供たちは、それを敏感に感じ取ります。時には、それが子供たちの不平等感や不平・不満につながっていくこともあります。
次第に子供たちも同じように、曖昧な生活態度や場当たり的な行動に変わっていきます。
せっかく初期の段階でつくり上げた規律が、徐々に崩れていくことになります。そうなってしまうと、学級経営における危険信号です。
そこで、指導を徹底していくことがとても重要になります。
大切だと思うことに対する指導を、いつでもどこでも同じように、徹底して続けていけるかどうかです。
教師にこの「徹底力」があるかどうかが、学級経営の成否に大きく影響します。
ある意味、徹底した指導があることで一定の秩序が保たれ、全ての子供たちが安心して学校生活を送れるといえます。
だから、諦めることなく、同じ指導を続ける徹底力が教師には必要なのです。
「こだわりと徹底力」にこだわる(笑)ことで、学級経営力を高めていきたいものです。