「ヨコの関係づくり」、6つ目のテーマです。
インプットとアウトプット
前回は、子供同士のヨコの関係づくりのために、話し合い、教え合い、学び合う授業をしましょう、という話をしました。また、その最初の段階である話し合いを見直していくことを提言しました。
そして、その重要なポイントは、インプットとアウトプットです。特に、アウトプットが重要であると私は思っています。
学び合う授業の核となるのは、話し合いです。
では、なぜ話し合いをするのでしょうか?
その理由は、単元や場面によって教師の意図やねらいがあり、一概には言えませんが、本質的には、互いの考えを知り、理解することを通して、自分の考えを見直したり整理したりしながら深めるためだといえるでしょう。
そのためにまず必要なことは、当たり前ですが、自分の考えをもつことです。
課題があれば、そこですぐに話し合いができるというものではありません。互いに自分の考えをもった状態になって初めて話し合いができるというものです。
この時、必ずしも全員が自分の考えを明確にもった状態でなくてもよいと思います。
できればその方が理想的ですが、中には頭の中が混沌としていたり、はっきりとした考えになっていなかったりする子供もいるでしょう。
それでもよいです。全員が完璧に考えを構築している状態でなくてよいということです。(むしろ、その方が自然です)
この時の重要なポイントの1つは、子供一人一人が自分の考えをもつために、資料を読んで調べたり、思いや考えをノートに書いて整理したりする時間を確保できているかということです。つまり、子供一人一人が事前に十分なインプットをしているかどうかです。
このインプットが、話し合いの深まりに大いに関係してきます。
教師は、このインプットの時間を十分確保し、話し合いができる状態(話し合いの土台)をつくり出しておくことが大事です。
この状態になってから、ようやく話し合いに移行していく訳です。
そして、重要なポイントの2つ目は、アウトプットです。
インプットで構築した自分の思いや考えをアウトプットする訳ですが、中には、このアウトプットがなかなかうまくできない子供もいることでしょう。
そこは教師の腕の見せ所です。ペア・グループ学習を積極的に取り入れましょう。
全体の前ではうまく発言できない子供も、ペアであれば安心してできたり、グループでなら落ち着いて話せたりすることがあります。
何より、1時間という授業の中で全員がアウトプットするためには、このペア・グループ学習がとても効果的です。日頃から適宜授業の中に取り入れ、その形式に慣れておくことも大事です。
最初はどうしても形からのスタートになるでしょう。ただのおしゃべりで終わるかもしれません。それでもよいのです。失敗と試行錯誤を繰り返しながらも、徐々にレベルを上げ、より効果的で深まりのあるペア・グループ学習を工夫していきましょう。
慣れてくれば、子供たちの方から進んでペアやグループで進めようとするようになっていきます。教師からも、そうなるように働きかけていけばよいのです。
話し合いの深まりは、子供一人一人の個性に影響されるところもありますが、やはり日々の授業の中でその能力を鍛えていくしかありません。
そのためには、学年により発言の仕方は多少異なるでしょうが、下記のような基本的な話し方を日頃から指導しておくことも大切です。
「○○さんと似ていて、ぼくは~と考えています」
「○○君とは違って、私は~と思います」
「□□さんにつけ足しで、ぼくはもっと・・・・だと思っています」
「□□君に賛成で、私は・・・・すればよいと考えます」
これらを元に、それぞれの思いや考えを進んでアウトプットさせていくようにしましょう。
このように、インプットとアウトプットを繰り返していくのです。
特に、1回きりではなく、インプットしたらアウトプットし、そのアウトプットを元にまたインプットする、そこからさらにアウトプットをして…、というように何度も繰り返していくのです。そうすることで、自分の考えが練り上げられ、深まっていきます。
この「変容」こそが「学び」といってよいでしょう。
教師は、これらを重視し、子供たちに積極的にインプットとアウトプットをさせていかなければならないでしょう。
どうでしょうか、少しはイメージが湧いたでしょうか。
インプットとアウトプットをたくさん行うことを通して、子供たちが関わりながら、ヨコの関係づくりを進めていくことが理解できたのではないでしょうか。
今回は、話し合いにおけるインプットとアウトプットの大切さ、ペア・グループ学習などについて伝えました。
ヨコの関係づくりの観点から言うと、話し合いにおける大切なことがもう一つあります。
次回は、そのことを伝えます。受容的・共感的に話し合うことです。