前回は、朝「教室で子供たちを迎える」という話をしました。
また、教室に入ってくる子供たちに、教師の方から明るく気持ちの良い挨拶をしようということもお伝えしました。
今回は、その「挨拶」について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
あなたのクラスの子供たちは、気持ちの良い挨拶をしていますか?
「挨拶」は、どの学校でも全校的な課題になっていたり、あまりよくない状況が見られたりするのではないでしょうか。
例えば、
「挨拶をしない子が多い」
「こちらから挨拶をしても、相手から返ってこない」
「挨拶の声が小さい」
「挨拶の時に、目が合わない」
などの声が聞こえてきそうですが、どうでしょうか。
学校では、きっと一生懸命「あいさつ運動」を行ったり挨拶に関する指導を強化したりしていることでしょう。
しかし、「たかが挨拶、されど挨拶」のごとく、「挨拶」はなかなか奥が深く、そう簡単にはよくならないというのが現状ではないでしょうか。
子供たちは、なぜ挨拶をしないのでしょうか?
私は、何年もの間、担任や生徒指導主事として、この難問に取り組んできました。
様々な取り組みをした経験があります。
「あいさつ勝負」というゲーム的な要素を加えた、挨拶の活動を行いました。
「あいさつレベルカード(挨拶レベルを5段階に分けたもの)」をつくって配付し、子供たちが自分の挨拶のレベル(現状)を知り、その向上を図る、という取り組みにも挑戦しました。
教室や廊下、玄関前などで、委員会の子供たちと共にたくさんの子に挨拶の声をかけるなど、あの手この手を使って「挨拶」を広めるようにしました。
しかし、多少は改善されましたが、「よし、やった!」と言えるような充実感や満足感を得るほどには、至りませんでした。
とても残念な思いを繰り返してきました。
たくさんの経験や失敗を通して気づいたこと…それは、子供たちは、挨拶を「しない」のではなく、「できない」ということでした。
つまり、挨拶を「する・しない」は、「しよう」とか「したくない」といった意識の問題ではなく、挨拶が「できる・できない」ということです。
要するに、その子のコミュニケーション能力が大きく関係しているということです。
コミュニケーション能力の高い子供は上手に挨拶ができ、能力の低い子供はなかなか挨拶ができないのではないでしょうか。
だとすれば、この能力が低い子にとっては、「挨拶」は大きな苦痛であったり、難しいことだったりすると考えられます。
そう考えると、ちょっとした「あいさつ運動」ぐらいでは、なかなかこの力は高まらないはずです。
長い時間をかけて練習をし、じっくりと実践を積み上げていくことでしか、多くの子供たちに挨拶の力(=コミュニケーション能力)を高めることはできないと思うのです。
このことに気づいてから、私の指導は大きく変わりました。
挨拶の指導も必要ですが、それだけでなく、子供同士で挨拶に関する話し合いをしたり、その良さを感じられるような練習(ソーシャル・スキル・トレーニング)をしたりするようにしました。
そうすることで、挨拶を含めたコミュニケーション能力を高める機会を増やしたのです。
他にもいろいろな方法があると思いますが、この方法はかなり成果につながったと思っています。
それまで、挨拶が苦手だった子供も、少しずつ挨拶をする(できる)ようになっていったからです。
時間はかかりますが、取り組んでいく価値はあると思っています。
これまでは、手っ取り早い、短時間での学級指導や活動(イベント)的なことで、結果を出そうとしていました。
しかし、やはり教育には時間がかかるのです。
継続的に、地道に取り組むことで、子供たちがもっている今の力を少しずつ向上させていくしかないと思っています。
人にとって「挨拶」は、とても大切なものであり、これからも必要なものです。
子供たちの「挨拶の力を高める」ことを、ぜひ目指してみてください。